「襟を正すは」 サマランチ前会長 貴方だ! IOC元副委員長、金雲龍先生の「オリンピック30年」出版祝賀会が六月二十五日、東京(パレスホテル)において盛大に行われた。各方面から列席した方々は、四割の支持を得てあと少しでIOCの新会長になるであろうと目されていた金雲龍先生に期待をしていたが、前サマランチの影響力はもの凄いものがあった。巨大化した国際総合競技大会を主催する組織としては、それ自体は極めて閉鎖的で世界に開かれていない組織というのが、IOCの実態である。ジャック・ロゲIOC新会長(ベルギー出身)の任務は、長期政権だったサマランチ前会長路線の功罪を総轄し、組織の刷新と大会運営の適正化を図ることにある。組織の脱欧州化と大会開催地の分散などが実現しないと、五輪は一層歪んだものになるだろう。会長選挙は、韓国出身の理事を含む五人の候補で争われた。しかし、結果は投票するIOC委員の構成から事前にほぼ読めていた。六対四でロゲ氏、もう少しで金氏のところであった。金氏の致命傷はサマランチ前会長より出た買収疑惑であった。これで四割の支持者のほぼ全員が金氏に投票しなくなった。サマランチ前会長の作戦勝ちである。百二十人を超える委員のうち約八割は、二十一年間在職したサマランチ前会長(スペイン出身)の推薦で就任しており、全体の半数を欧州勢が占める。メンバー構成の有効性も手伝って、歴代八人の会長のうち欧州出身はこれで七人目となった。昨年のシドニー五輪には二百もの国・地域が参加した。国連加盟国に匹敵する規模にもかかわらず、IOC組織自体は、近代五輪の始まった十九世紀末の欧州貴族のサロンから基本的に変わっていない。今度の会長選挙で、候補者は一般向けの公約を発表することができなかった。サマランチ前会長の意向とされる。名誉会長になった前会長の長男は、新委員の一人に選ばれた。IOCが開かれた組織に生まれ変わった、とは言えない。こうした体制で、直面する問題に対応できるのだろうか。サマランチ体制の見直しで、不可欠なのは商業主義への評価だろう。赤字に陥った運営を立て直すため、前会長は巨額の放映権料、企業広告を前提にした商業主義を推進した。黒字化には成功したものの、巨大ビジネスとなり、大会招致スキャンダル、薬物汚染など不祥事が続発。事実上、大都市でないと大会を運営できなくなり、未開催の地域が多く残っているのも問題だ。ロゲ新会長は、大都市以外でも開催できるよう五輪の肥大化を抑制し、薬物問題への取組みを強化すると表明した。この方針に異論はない。問題は方法論だ。過度の商業主義を是正するには、NPO(非営利組織)との連携など、新たな視点が必要になる。その方向を模索するには、IOC委員の構成を見直すなど、まず大胆な自己改革が必要になる。
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