「市民のための警察」に立ち返れ

 全国の地方警察署を緊急に一万人増員する計画を警察庁が進めている。現在約二十三万人いる都道府県警察の警察官をまず来年度に五千人増やし、二、三年以内にさらに一万人増員するという計画である。警察官の数は、戦後穏やかなペースで増えてきた。これまで二万人増員するのに十九年、一万人の増員に六年を要した。今回は例のない急ピッチの増員計画といえる。警察庁によると人件費などに一人あたり年間約一千万円かかり、地方自治体がこれを負担することになるという。財政状況の悪い自治体にとっては、かなりの負担だ。緊急増員の理由として警察庁は、現在の人員では治安の維持に十分な自信がもてないとしている。確かに犯罪は激増している。昨年の刑法犯罪件数は戦後最悪の約二百四十四万件を記録した。今年上半期は昨年同期より約16%増加し、今年も最悪を更新する恐れが強い。中でも外国人グループによると見られる窃盗や強盗が多発し、それが都市部から地方にも拡大している。逮捕できたとしても、取り調べや拘置などに割かれる人手や労力はますます大変になってきた。さまざまな批判を受けてようやく重点を置き始めた安全相談への問い合わせも一年で倍増している。ストーカー行為に関する市民からの相談は一年で三倍増である。行政窓口が週休二日制になり、夜間も含めて警察への依存が増している。これまで家庭や地域社会で解決していた問題の多くも警察に持ち込まれているのが実状だ。パトロール強化の要望の一方、誰もいない「空き交番」への批判がある。背反した要求にも答えざるを得ない。警察庁は、ただ増員を求めているのではないと説明する。これまで管理部門のスリム化などに努め、九千五百人を配置転換し、薬物や少年犯罪に取り組む生活安全部門や刑事部門に重点的に振り分けたとしている。今年度中さらに二千五百人を配置転換する予定ともいう。犯罪が多発し複雑化する中、今回の増員計画に理解できる点は多い。しかし、それを認めるにはいくつかの条件がある。警察官の質が向上しなければ、数を増やしただけでは、犯罪は結局減らないだろう。団塊世代のベテランの捜査員の多くが今後退職していく中、捜査員の質の向上にもっと努める必要がある。合理化を徹底すべきだ。部署の統廃合を積極的に進め、市民の役に立つ警察への変身に努めてもらいたい。増員される警察官は刑事部門や交番勤務などの市民生活に近い部署に配属されるべきだ。神奈川県警に代表されるような多発する不祥事の再発防止策も徹底しなければならない。警察への信頼回復なくして増員要求はあり得ない。要は、市民に開かれた市民のための警察の大原則に立ち戻ることだ。それなしに安易な増員を認めることは出来ない。襟を正して前向きに取り組んでもらいたい。
 三十数年前と何ら変わらずに、同じ事が繰り返されていることに腹立たしさを感じる。偶然その場に居合わせただけで「逮捕」された例や、電車内で女性の尻を触ってもいないのに痴漢だと逮捕された例など、国家権力という力で押さえ込もうとする事件が今でも平然と行われている。三十数年前、戦争帰りの人達が警察官になり、当時の大学生や高校生に向かって「親のすねをかじっている奴が生意気に遊んでいるんじゃない」と直ぐに逮捕したり、補導したりした。「逮捕されたり、補導された人間はたまったものではない」。今でも警察はやってもいない事をやったと言わせる。「拘置をちらつかせ捜査官の意向に添った供述をさせる」。警察はいつも「拘置」をちらつかせ脅かす。学生や会社員は、プロである彼等にかかれば、赤子も同然である。どんな事があっても、これからの警察は、こういう事のないように襟を正して欲しいものである。「力は弱者に使うものでは無く、罪に対して使うものだと・・・・・。」