「JAL」さん、統合うまくいくはずないヨ!

早くも失速寸前か、なんて声もある。世界第6位の航空会社誕生と持て囃された日本航空と日本エアシステムの経営統合。発表されたのは昨年十一月だったが、肝心の統合協議は一向に進んでいないという。そればかりか、目の前には難問障壁が山積みなのだ。そもそも、めでたいはずの統合発表記者会見からして、ちょっと異様な感じではあった。何しろ、何を狙ってのことなのか、両社長の後ろには十名のスチュワーデスがずっと立ちっ放し、しかも、笑顔は笑顔だが、どこかひきつったようでぎこちない表情。「あの会見は、前日の日経新聞でスッパ抜かれたために急遽、行ったもの。あの時点では、統合のための株式の交換比率や新会社の社名など、具体的なことは何一つ決まっていなかったんですよ。」(大手紙経済部デスク)。ようやく、先月末に計画の概要を発表したが、その内容もまだ大雑把。とりあえず十月に共同持株会社を設立し、二年後に国際線、国内線、貨物の事業別子会社に再編するというもの。結果、目下は国内線で過半数近くのシェアを押さえられている全日空に、新会社は約四六%まで肉薄できるという算段らしい。「さすがに脅威ですよ」と、その全日空のある関係者がこう言う。「国際線ではうちは二割程度のシェアしかないので、国内線で追られると苦しい。だからこそ、即座に公正取引委員会に三百ページを越す統合反対の上申書を出したのです。」その公取委の審査結果が出るのは近々。二年前からの本格的な航空自由化で新規参入が始まったものの、実態は未だに三社寡占。その二社が統合するのだから、独禁法に抵触する可能性がまるでないわけではない。が、難問はその程度ではないと、JASのさる中堅幹部がこう打ち明ける。「この統合には問題が多すぎます。例えば、給料の格差がハンパじゃない。JALの場合、機長や管制職以外の社員は概ね、三十代前半で年収が一千万円台になります。対してウチの場合、その大台に乗せるのはせいぜい四十歳手前くらい。四十代では軽く二百万円の差がついてしまうんです。」高い方に合わせれば莫大なコスト増になり、そもそも統合する意味がなくなる。かと言って低い方に合わせれば、今度はJAL従業員の猛反対を食うことになる。「JALでは、未だに組織が職種別に五つに分かれており、御用組合とそれ以外が勝手な主張をして反目していますから、まとまるわけがない。うちだって組織は二つに分かれてますから、このまま統合すればひとつの会社に七つの組織ができ、とても経営の効率化など進められないでしょう」。さらに問題なのは、両社の使用機種の違い。JALはボーイングに統一しているが、JASはエアバスが中心。「機種が違えば乗員訓練や機体整備も違うので、逆にコストは割高になる。仮にJASの現在の機種を変更するとなると、それだけで数百億円はかかるでしょう」。企業年金の問題も大きい。航空ジャーナリストの杉浦一機氏が言う。「給与では、社長より高給のパイロットも問題。JASのように万年無配会社ですらそうですから、パイロットの意識変革も断行しない限り、統合はうまくいかない」。離陸はしたものの着陸失敗、なんてことにならねばいいが。船曳社長統合おやめなさい。うまくいくはずないヨー