“議長さん”株主への誠意ある対応を

 やっと株主総会も終り、ひと段落。毎年この時期になると、各企業の総務・株式担当者の心は梅雨空のように晴れない日々が続き、やっと気の抜ける時期に入ってきた。一昔前のような総会屋の横行こそ減ったものの、準備と対応に手が抜けないからだ。そんな担当者の一人、増山三男氏(四六)に会った。
 増山氏は現在、ある銀行の総務部に属している。今年の総会は平穏に終わりそうだが、仕事の合間にしきりに思いだされるのは、あの時の、あの総会のことだ。
 一九九八年六月二十六日の山一証券、最後の株主総会である。増山氏は、今の職場に移るまで、山一証券に勤めていた。最後のポストは総務部次長兼株主課長。前年の十一月に自主廃業を発表した同社は、この第五十八回定時株主総会で解散の特別決議を成立させる予定だった。その幕引きの実務の責任者が彼だった。
 「株主は損失補填や飛ばしのことを知らされず、突然廃業の方針を聞かされた。怒りを爆発させて、総会が大混乱に陥る恐れが強かった」と、当時を振り返る。このためスタッフ一同は、大株主への協力工作や想定問答集づくりなど、例年にも増して周到な準備を進めた。「なぜ、この株を紙屑同然にしたのか…」。増山氏が壇上の野沢正平社長に詰め寄り、持っていた書類を投げつけた。不測の事態に備えてリハーサルも行われ、株主に扮した社員がこんな演技を繰り広げる場面も見られた。
 増山氏自身も、こつこつと自社株を買い増し三万五千株を持っていたため、「あの時は思わず力が入った」という。「同僚は次々と転職していく。でも、我々スタッフは、立派な『葬儀』を出すまでは辞められないという気持ちで準備に没頭した」と当時の心境を語る。
 結局、出席者が足りず解散決議は不成立に終わったが、総会の終了を待って、増山氏の二十五年間の山一での生活にも終止符が打たれた。
 「株主総会は、見物人のいない喜劇である」という。確かに、日本の総会は形骸化している。株主の最高意志決定機関のはずだが、短時間で終わるシャンシャン総会が理想とされ、担当者は体面を守ることに腐心する。会社は、株主でなく、従業員のものだという考えが強いからこそ、山一の例のように、会社が消えかけているのに、担当者は最後まで忠誠を尽くすのかもしれない。
 最近は、株主へのIR(投賢家向け広報)の場にするなど、開かれた総会も増えてきた。だが、上場企業のうち咋シーズンの総会に想定問答集を用意した社は九三%、リハーサルをした社も九○%にも達する(商事法務研究会調べ)。
 やはり簡単には、お家大事の意識は消えないのである。この何年間か株主総会を見てきて、総会は会長、社長、取締役のものという印象を強く抱いた。大切な株主様からの質問に対し、社長自らがきちっと誠意ある回答をしない企業も多い。今年のNTTの株主総会もそうだった。発言をする株主様に対し、1から4の番号の付いた所で発言させる。これでは犬の品評会と同じではないか。株主を馬鹿にしているとしか思えない。こんな総会の運営が平気でまかり通っている。反社会的勢力といわれた方々の存在があながち無駄では無かったのではないかとつい思いたくなってしまう。
 もう少し開かれた、株主の立場に立った対応を強く望む。