石原都知事“貴方に日本を任せる”

 石原慎太郎・東京都知事が、持論のカジノ解禁に向け大きく動き始めた。先般都内で行われたシンポジウムで約二千人に向け、「お台場カジノ構想」をブチ上げた。石原知事は、これまでもカジノ解禁に言及してきたが、大勢が集まる公の場で口にしたのは初めて。
 折しも、東京・歌舞伎町で、非合法の賭けゲーム麻雀店を火元にした火災で死者四十四人が出る大惨事が起きたばかり。石原都知事にとっては、こうした事情などから、その意をますます強くしているようだ。その日「大交流時代における観光を考える」(主催・東京都)と題したシンポジウムに出席。
 東京部千代田区の日比谷公会堂で、「東京都からカジノを提唱して、政府を動かしたい」と、カジノ構想について声を大にして訴えた。
 これまでにも、石原都知事はカジノ構想について度々発言。二年前の都知事選で、公約の一つとして主張したほか、今年五月にも私的懇談会の席上、「先進国のなかで百万人以上の大都市にカジノがないのは、日本だけ」と訴えた。石原都知事がこれほどカジノにこだわり、この時期に大舞台で改めてブチ上げるのには理由がある。
 石原都知事は「お台場にカジノを作れぱ、一万人の雇用を創出できる」と、ハジキ出す。目下経済情勢はIT不況から、電気メーカー各社は大リストラ計画を次々に発表。こうした情勢もあり、「カジノ実現→雇用創出」という主張は受け入れやすい環境にある。しかも、小泉首相が掲げる構造改革には“痛み”が伴うとして、「改革をすると企業がつぶれ、失業者も出るだろう」と、大量の失業者が出ることを予測。小泉改革を後押しする石原都知事としては、「平行して新しい産業を創出しなければならない。その最たるものがカジノだ」と位置付けているのだ。
 こうした石原都知事の動きを援護射撃する動きも活発だ。評論家の室伏哲郎氏は、「日本カジノ学界」理事長として六年前から活動。同会にはエコノミストの紺谷典子、作家の猪瀬直樹の各氏らが名を連ね、室伏氏は「カジノを合法化すれぱ三十兆円、三十万人の新産業が創出できる。賢本主義社会は、株を見ても分かるように基本的にギャンブル社会。そのことに目を向けなければ生き残れない」と訴える。
 さらに、室伏氏らは、ギャンプルが解禁されないなか、国民的レジャーとして巨大産業となっているパチンコも「ゲーミング法」を制定することで、不透明な部分がなくなるほか、社会のガス抜きもできる、と主張している。
 石原都知事も「皆一律に合法化することで、新しい娯楽というものが日本に育ち、新しい都会の上層が育ってくるかもしれない」とカジノ解禁のための法改正に向け、意欲満々だ。これに対して、都の事務方はこれまでに具体的な動きをほとんど見せていなかった。だが、銀行への外形標準課税やディーゼル車対策など「有言実行」の石原都知事による重ねての発言だけに、今後カジノ構想実現に向け、具体的な動きが出てくることは間違いなさそうだ。