薬物の底流「全国十二の体育系大学で、柔道部に対しドーピングの意識調査をしたところ、全体の四.五%にあたる二七人が『経験がある』と答えた。多くは利尿剤の使用。中にはステロイド使用の例もあった」…。
一咋年に行われた日本武道学会で、東海大の研究グループが、こんな調査結果を報告した。将来の伝統競技を支える指導者候補の中に、薬物使用の根がうごめいていることは、関係者に衝撃を与えた。 日本のトップ選手のドーピング実態は、過去にも何度か報告されている。九〇年に日本体育協会が国体参加選手を対象に実施したアンケート調査では、全体の〇.二%にあたる三三人が「(禁止薬物の)利尿剤を使った」と答えた。 北里大医学部のグループが九九年、自転車競技などの指導者を対象に行った調査では、選千が希聖した場合三.二%の指導者が「使用を許可する」と回答。六.七%%が「わからない」。五%が「わからなければよい」「場合による」「選手に任せる」と拒否の姿勢を示さなかった。指導者および指導者予備軍の反ドーピングに対する意識の低さは、そのまま、この問題に対する国内の対応の遅れを物語っている。 まず、チェック機能。日本では、子供のスポーツ現場でドーピング検査が行われることはまずない。大きな大会ごとに見ても、中体連ではゼロ。高体連や国体では、水泳などの一部の競技団体が自発的に行っている程度。 サンプル数を見ても、米国では高校、大学生を含む年間約五〜六万人がチェックを受けているのに対し、日本では国際大会に参加するトップ選手への二千〜ニ千八百人程度と極端に少ない。啓発活動の面でも、学校の保健体育の授業に反ドーピングの項目が盛り込まれず、日本医師会のスポーツ医療制度のカリキュラムにも、ドーピング問題は含まれていないのが現状だ。チェックが少ない背景には、ドーピング検査のコスト問題がある。 一サンプルにかかる費用は、ギリギリまで切りつめても三万五千円もかかる。さらに、日本オリンピック委員会(JOC)アンチ・ドーピング委員会前委員長の川原貴委員は「教育的配慮ということが大きい。例えば、たばこを吸っている可能性のある子供のカバンをいきなり開けるようなことは、日本の教育現場ではないでしよう」と説明する。 確かに、教育現場に不正の「摘発」はそぐわないかもしれない。J0Cや、スポーツ医科学研究所らが設立準備を進めてきた「日本アンチ・ドーピング機構」に先頃、文部科学省から財団法人としての認可が下りた。薬物使用の根をどう刈り取るか…。今後、五輪競技以外の各種プロスポーツにも参加を呼ぴかけていく方針だ。 |