警察署に火炎瓶を投げた少年

 数年前、大阪・堺地区に住む少年が公務員から受けた差別を理由に、警察署に火炎瓶を投げ、その一カ月後に逮捕されるという事件があった。
 火炎瓶を投げた行為に対する非は非として認めるとしても、その後にこの少年が引き起こす事故との関連も踏まえて、その原因となった差別問題について重要視した。
 というのも事件を起こしたその少年が、某年の三月にバイクによる交通事故を起こし、本人も三カ月の重傷を負ってしまった。
 少年は事故に対する非を認め、少年の親からも被害者に対してそれなりの謝罪があったと聞いている。ところが事故を起こしたバイクが世に「トカシ」(名義書換できない車やバイクのこと)といわれるバイクであった。しかもそのバイクの所有者が現れ、所有者の母親から「百万円もするバイクなのだから弁償して欲しい」旨の申し出が、この少年と親に対してあった。
 少年は「僕はちゃんと買ったんだ。盗んだんじゃない」と主張したが、当の母親が「人のバイクに(名義変更できないから)乗っていたら、盗んだのと同じ」と発言。
 少年は「人を犯人呼ばわりする。これは差別だ」と怒りを露わにした。
 だが、ここでの問題は、事故を起こしたバイクの所有者の母親に、どうして警察は容疑の確定していない(盗んでもいない)少年の名前、住所を教えたかである。東京の警察に上記の問題について相談したところ、以下のような事例をあげた説明があった。
 「もし仮に貴方の自転車が盗難にあい、最寄りの警察に盗難届けを出したとする。数カ月後に、どこかに放置されていた貴方の自転車に乗っていた人が、たまたま警察の職務質問で見つかる。乗っていた当人も、はじめて自分が乗っていた自転車が盗難車だと知る。この場合、当人が直接盗んでいれば、当然処罰されるが、そうでないとしても、他人の自転車に乗っていたということで始末書は提出させられるだろう。しかし、警察が罪状の確定していない被疑者の住所、名前、電話番号を、盗難届を出した人に告知することはない」
 今回の少年の問題は、明らかに被害者に対する警察側の対応の誤りではないか。また警察側がこのような行動をとった背景に事故を起こした少年に対する誤った認識があったのではないか。